「めぐろ診断士会」は、NPO法人 目黒中小企業診断士会の略称です。

活動紹介

東京下町ソラマチにおける心理的購買促進手法に対する一考察

大寒の明けた1月24日(日)、我が目黒中小企業診断士会佐々木理事長を筆頭とする精鋭タウンウォチャー10名(想定平均年齢ニアー還暦)は東京下町(ソラマチ)のまち処に地上押上標準時間13時30分に会同し、東京スカイツリー視察を敢行致しました。地上から見上げるツリーは巨大であり、視野180度首を左右に振れど視界には収まり切れぬ程であります。その際ふとディズニーランドにおいて、大人は景観を見渡すが、子供は目一杯頭をもたげその巨大さを認識するのに似ているなと思いおもわず苦笑してしまいました。

屋上「ぐらんぐりんガーデン」集合写真さてその斜けいをおおう天は晴天、雲一つなく、風は強風、身は体感的3℃のオンバランスの環境の中、高速エレベーターに導かれた後、階上の展望室から眺める近代的「江戸」の眺望は逆光をもろともせず、遙か彼方の富士山を仰ぎ見ての360度大パノラマ正に鳥瞰的ラウンドトリップの醍醐味を満喫いたしました。その後はいよいよ見開かれた目とマインドをもって、非日常的意識にどっぷりと浸かったまま、階下のテナントショップを視察。その際、このマインドがコントロールされている(ハイテンション状態)のが大きなみそだと思いました。それは消費者購買行動に於いて心理的に非日常的なポジションにリマインドすると言う事は次のような大きな効果を生む可能性が高くなるからです。まず最初に視認視野が大きく拡大されます。つまり普段なら目にとまらないものに対して能動的に捉えられる様になります。その分刷り込みの量が増えます。次にアンカリング効果(最初に見聞したものが最終的決定要因の基軸となる)です。特に価格において初めに認識したものが最後迄大きく判断基準を左右します。例えばお土産品が980円だとするとその価格より高いものはより良いものだろうと、又低いものは更にお値打ち品だろうと。ですからプライスライニングの高低によっては客単価を上げ得るポテンシャルに大きく寄与すると言う事になります。

そして最後は高揚した気分において間違いなく財布の紐が緩くなると言う事です。この感覚をいつまで持続させるかが、マーケッター及びレイアウトプランナーの腕の見せ所になるのでしょう。

水のオブジェ「AQUA DROP」実際に5階にあるテナント街を見て行きますと、随所にさり気ない仕掛けが施されているのが良く分かります。恐らくフロアーコンセプトは「日本・下町・古き良き江戸・和・伝統」あたりだと思われますが、知らず知らずのうちに「仮想的江戸の街並み」に誘いこまれていきます。通路の両幅は意図的に狭く設計され、賑わい感を演出し、左右に並列する店は店内が良く見渡せる様に工夫され、それぞれの店が○○屋、なら屋的なくくりでその専門性を如何なく発揮し、店内外共に確り回遊性が計算されている様に見受けられました。身近に楽しさを発見出来、且つ懐かしさを再発見出来る。年配の方々は不連続的に童心に回帰し、伝統性を追認する。片や若い人達はそこに新奇性、意外性を垣間見る。飽きさせずにより広い客層を取り込んでいるのです。

つまるところまず顧客を展望台迄引き上げ、ハイテンション状態の時に、より心地良い非日常的空間を提案する。満足度逓減の法則を巧みに引き延ばし暫時4階以降(ほぼ普通の専門店街)日常的空間に少しずつ戻していく。そして2階に到着し完全に日常感を持ちえた後も次回機会があれば、展望台には行かなくても東京下町ソラマチにはリピートする率は高いのではないだろうかと確信しました。なんとなくデフォルメすると行きは鋭角的な三角形であるが、帰りは巨大な逆すり鉢形の様なイマージュでした。

そしてその後はいくらか疲労感を背負いながら、毎日がお祭りなはずの浅草仲見世商店街を視察し、最後は今も尚地上において下町を謳歌出来る「神谷バー」にて電気ブランに痛電し、それぞれのミッションを果たし得たタウンウォチャー10名は振り向きもせずに夜の帳に溶けて行きました。

是にて御仕舞い。拙筆にて御免なさい。

(めぐろ診断士会 近藤 光二)

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